さよならの魔法



責められない。

周りのクラスメイトを責めることは、私も出来ない。


私も同じ立場なら、きっとそうする。


みんなの気持ちが、痛いくらいに分かってしまう。



関わりたくない。

面倒なことに巻き込まれたくない。


標的にされたくない。

平穏無事な生活を送っていきたい。


私だって、手を差し伸べないかもしれない。

言葉をかけることが出来ないかもしれない。



だから、誰のことも責められない。

責めたくないのだ。



手を差し伸べたり、助けたりしないのは、先生だって同じこと。


目を合わそうともしてくれない。

何も言えずに、見て見ぬフリをしているだけだ。



ほらね。


あの頃と、何も変わらない。

小学生だったあの頃と、全く同じだ。



先生だって、別の先生なのに。

周りのクラスメイトだって、別の子ばかりなのに。


取る態度は変わらないなんて、なんて皮肉なんだろう。





「あーあ………。」


穢れたものを見る目付きで、磯崎さんが私を見下ろしている。

蔑む視線で、私を見下ろしている。


汚らわしいとでも言いたいのだろうか。

汚いと、そう言いたいのだろうか。



その原因を作ったのは、あなたなのに。


私の絵を汚したのも。

私のスカートをびしょ濡れにしたのも。


全て、磯崎さんがしたことが原因なのに。



磯崎さんが漏らした溜め息に、私は目を吊り上げる。


何も言えない。

反論だって出来ない。



だけど、私だって人間なんだよ。

意気地なしでも、弱虫でも、磯崎さんと同じ人間なんだよ。


人間だから、心がある。

気持ちがある。


何も考えない人形じゃない。

何も感じない人形なんかじゃない。



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