さよならの魔法
「まーた、喧嘩してるー。ユウキと矢田くんって、仲がいいのか悪いのか………よく分かんないね!」
呆れながら、茜が俺の隣でそう言うんだ。
これが、最近の俺の日常で。
俺と茜。
俺達を邪魔する様に、2人の間に割り込む矢田。
微妙な距離のこの関係が、きっとベスト。
この関係を、俺は案外気に入ってる。
付かず、離れず。
ちょうどいいこの距離が、心地いい。
「あ、優美!こっちこっちー!!」
そこにやってきたのは、茜の友達。
茜が海へと誘った友達は、俺と茜のクラスメイトだった。
林田 優美【ハヤシダ ユミ】。
去年から、茜とは同じクラスだったらしい。
もちろん、俺とは今年、初めて同じクラスになっただけの関係。
茜とは親しくても、俺と林田の関係は薄いもの。
多少言葉を交わしたことがあるだけで、そこまで深くお互いのことを知っている訳ではない。
茜という存在がなかったら、きっとそこまで話す仲にさえならなかったであろう。
類は友を呼ぶとは、こういうことを言うのだろうか。
林田の服装も、茜と似て、とても開放的なものだった。
真っ黒なタンクトップ。
焼けた肌に合う黒地のタンクトップには派手なプリントが施されていて、その下にはかなり短めの丈のカーキ色のミニスカート。
夏らしい、と感じさせてくれる装い。
(………、矢田が好きそうなタイプだな。)
全てという訳ではない。
でも、似ている。
どことなくだけど、茜と林田は似ているのだ。
矢田の好みなんて、本人に聞かなければ本当のところは分からないが。
俺の想像する矢田の好きになる女って、こういうタイプの女の子。
明るくて。
開放的で。
どこか、垢抜けていて。
1年の時の矢田の言葉を思い出す。