～宿命～

今度は振り返ってみた。
すると、さっき居なかった場所に俺の携帯を握って立っている水和の姿が。
明隆：「…何で。」
歩調が次第に早くなり、水和の所へ走った。
霞(かす)んだ目で彼女を見つめポケットを確認する。
水和が涙を拭きながら携帯を差し出す。
水和：「バカ。こんな所に見捨てて行かないでよ。恐いじゃん。はい、これ。」
携帯を受け取ると、水和の手を掴んだ。
明隆：「すまん。誤解してた。これからは何がなんでもお前を守ってやる。何がなんでもお前を見捨てない。何がなんでも…お前を…」
これ以上我慢は出来なかった。
涙腺が緩いのは親譲りなのか、それとも生まれ持った個性なのか。
掴んだ手を引き寄せ、水和を抱き締めた。
二人は静かに涙を流しあった。
人通りのない路地で良かったと思ったのも束(つか)の間。