放課後ラプソディ
 就職活動がうまくいってないと聞いた。もしかすると、無職になってしまうんじゃないか。それが怖い。

 学校にも、会社にも属さず、なにもしてない人は、ニートだ。姉ちゃんは、絶対そうなりたくない。だからわかるよ、ストレスがすごくたまっているんだって。
「死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい、死にたい死にたい死にたい死にたい死にたいいいいもー!」

 何回死にたいって言ったんだろう。

 俺は、姉ちゃんが姉ちゃんでなくなっている状態を「悪魔憑き」とひそかに呼ぶようになった。

 楽しんではいない。笑えないときは、冗談でも、無理にでも、そう考えたほうがいい気がして。

 姉ちゃんが悪魔憑きになると、俺は自分の部屋に移動して、ドアを閉め、あとは母さんにまかせてしまっている。

 ドアの向こうからまた、姉ちゃんの声が聞こえてきた。

「死にたい! もう殺してほしい! ふざけんな、こんな風になりたくて」

 ドカッ!

 なんだいまの、すごい音。

「なったんじゃねーよー! なりたくてなったんじゃないいい!」

 ドアを開けて、なにがあったのか見たほうがいいか。それとも、黙ってここにいたほうがいいか。

「やめなさい!」

 父さんの声だ。頼む、父親として、姉ちゃん止めてくれ。心から願った。
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