放課後ラプソディ
 部屋から出てきた六坂の顔と髪が、濡れている。肩には髪からしたたり落ちた水滴がだいぶたれて、首まわりのシャツのえりは少し透けて、ブレザーの紺色がさらに濃くなっている。

 前から水をかけられた、とひと目でわかる。その上、よけきれなかったのだと。

 霧恵も、さすがになにも出てこないらしい。あたしだって、こんな六坂になにも言えない。


――


「ここ最近、何となく元気がないんだよね。なんかこう、なんだか、あんまり生きていてもいいことないなって」

 星野の声が少し暗くなった。

 家に帰りたくないと言ったけど、実はけっこう悩んでいてあんなこと言ったのか?

「なに? まさか死にたいとか」

 極力明るい感じで言ってみた。この手の話は、深刻なトーンで話すと話しづらくなる。

 すると、星野はあいまいな微笑みを浮かべて、少しだけ眉間にしわを寄せてから、

「んー、そうなのかな」

 と、否定しなかった。
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