偽りの婚約者
トイレに行こうと立った時にクラクラとなって少し、ふらついてしまった。
さっきまでは座っていて気がつかなかったけど立ち上がったら、かなり酔っていたのが分かった。
……ちょっと、まずかったかな。
何だか、だんだん具合が悪くなってきたような……。
トイレに向かって歩いていたけど、気持ち悪さに途中で動けなくなってしまった。
紗季さんに付いてきてもらえばよかったかな。
しばらくその場で蹲っていると。
「おい、大丈夫か?」
近くで男の人の声がした。
「立てるか?」
「は……はい……。っ……!」
無理に立ち上がろうとして、またクラっとして……やっぱりふらついてしまった。
どうしよう、立てないかも……
「無理だな……」
そんな心中が分かったのか、誰かが私を支えてくれて何とか立てた。
「すみません……。」
「さっきパーティーは終わって、みんな帰り始めているけど」
私がここに蹲っている間に終わっちゃったんだ。
私も早く帰らないと。
「そうなんですか……後は一人で大丈夫ですから、ありがとうございました」
相手から手を放して歩こうとしたんだけど、またグラッと体がふらついてしまった。