偽りの婚約者
お酒の酔いのせいで、思うように体が動かない。
「……歩けそうもないな。とりあえず、ここを出よう」
「す、すみません……」
そのままその人に支えてもらいながら歩いた。
「今タクシー拾うからちょっと待ってろ」
そう言って、ちょうど近くにあったベンチに座らされた。
この後、タクシーに乗せられて何かを訊かれた気がしたけど酔ってぼーっとしている頭には相手の言葉なんか入ってこなくて……
隣から感じる人のぬくもりと、時々揺れる振動に眠気を誘われそのまま眠ってしまった。
どのくらいの時間が経ったのか分からないけど、ふっと目が覚めて……私はゆっくりと起き上がった。
「うっ、イタッ……」
思わず頭を手で支える。頭が酷く痛む。
……ここ、私の部屋じゃない?
あれ?昨日パーティーで私は動けなくなった……。
その後、どうしたんだっけ?何があったか覚えてない……。
バタンと音がしてドアが開かれた。
「起きたのか」