偽りの婚約者
開かれたドアから入って来たのは、見知らぬ男の人だった。
茫然として、固まってしまった。
「……あ、あなた、誰ですか?」
「……やっぱり覚えてないか」
「お前、昨日パーティー会場で動けなくなったのは覚えてるか?」
私は頷いた。
「タクシーをひろって乗せたはいいが、そのまま寝入っちまうし、お前の家は知らないから結局ここに連れて来るしかなかったんだよ」
軽く溜め息をつかれ、睨まれた。
「ものすごく迷惑をかけたみたいで……、すみませんでした」
「動けなくなるなら、もう酒は呑まない方がいいんじゃないか?」
「う、は、はい……。」
確かにおっしゃるとおりで反論の余地はないです……。
って言うか、他に聞かなければいけない事が……。
「その、ものすごく聞きづらいですけど……」
「なんだ?」
「あの……私はあなたと……その……」
「……関係があったかって事?」
「も!もちろん、あるわけないですよね!?」