偽りの婚約者





「……はぁー……」



「……千夏、さっきからため息ついてばかりだけど。どうかした?」



隣で仕事をしている紗季さんが、心配そうに声をかけてきた。



「大丈夫です。何でもないです」



「そう?ならいいんだけど……。
そう云えばパーティーの時はどうしたの?途中で帰って来なかったよね」



「そうだよ千夏。あの時は気がついたら、いなくなっていたし……先に帰るなら、ちゃんと言ってよね。
心配したんだから」



「ごめんなさい。飲み過ぎて具合が悪くなってしまって……そのまま帰ったんです」




二人には朝、起きたら知らない男の人のマンションにいた、なんて事はさすがに言えなかった。





< 15 / 256 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop