偽りの婚約者
話したい事があると先輩のマンションに行った。
「計画は順調か?安西さんからは聞き出せたのか?」
「計画は中止です」
「は?どういう事だよ?安西さんと何かあったのか?」
「俺が、もうダメなんです。
千夏を巻き込みたくない」
「……お前は玲奈さんを傷つける事になると分かっていながら復讐をしようとしていた。
それが安西さんのためにやめるって言うんだな?
どういう心変わりだ?
東條、お前もしかして……」
「俺は安西千夏が好きです」
「……お前が安西さんを好きになった?それで見事にお前の復讐を安西さんが止めたって事か、あの安西さんがか……」
先輩は考え込むように黙ってしまった。