偽りの婚約者



「無理なんてしてないです。休みの日以外に私が泊まったら迷惑ですか?」


「…………」




「迷惑なんですね。もう、いいです。このまま家まで行ってください」





「そういう事じゃない」


えっ?


「泣いているお前が気になって迎えに来たんだ。
今のお前は何があったか知らねぇけど、いつもより顔色が悪いし。
疲れきってて今にも倒れそうに見える。
辛い事があったんなら慰めてやりてぇし……だけどこのまま連れ帰ったら朝まで離せそうにない」



「それでもいい。今は東條さんと一緒にいたいんです」


「…………」


「いひゃい……にゃにするんですかっ!」


突然ムギュウと両頬をつねられた。



「プッ、クククッ変な顔」



「…………」


東條さんの手が放れて、痛む頬を撫でた。



まだ可笑しそうにしている。


思いっきり睨んだら、また吹き出して笑い出した。



もう知らない!!


ムスッとしたまま窓の方を向いた。

「千夏、拗ねてないでこっち向けよ」


機嫌の直らないまま振り向くと。





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