偽りの婚約者
「あ―――っ!!あなたは―――――」
「……やっと俺の事、思い出したか」
「だっ、だってあの時は慌てていたから、貴方の顔をよく覚えてなかったしそれに……!」
「もしかして、写真を見ずに今日ここへ来たとか?」
「いや、写真は見ましたけど……」
こんな事って、あるんだろうか?
二度と会いたくないって思っていたのに、こんな形で再会してしまうなんて……。
「まぁ、その辺の事はいいよ。これからどうするかだけど」
「この話、破談にしてくださいっ」
出逢いは最悪、お互いにもう会わない方がいい。
向こうもきっとそう思っているに違いない。
そう思って言ったのに返ってきた返事は私が想像していた言葉とは違っていた。
「……それは、困る」