偽りの婚約者
主任は急に立ち止まった。
主任?
「だから、そんな事を言われても引き下がれない。
俺は、このまま諦めるなんて出来ない」
そう言葉を返してきた主任はさっきまでの柔らかい雰囲気ではなくなった。
じりじりと迫ってくるような感覚に足が一歩後ろに下がる。
「そんなに怯えないでもいい、ただ話しているだけなんだから」
そうは言われても……。
「千夏!!」
紗季さん……?
視線を主任から外して呼ばれた方に向けると……
紗季さんがいた。
良かった主任との話しは終わりにできそうだ。
「邪魔が入ったか。俺は諦めないから」
主任は会社の方に戻って行き。
入れ代わりに紗季さんが小走りでやって来た。