偽りの婚約者
「ねぇ、主任と何があったの?主任がわざわざ、千夏を追いかけて来るなんて?二人で話し込んでるし……。
何だか怪しいんだけど」
鋭い紗季さんの追及の手からは逃れられないみたいだ。
でも、さっきよりも人通りが多くなっていてここでは話せるような内容じゃない。
それに、もうすぐ駅に着く。
「ここじゃ話しなんて出来ないね。ちょっと来て」
手を引っ張っられて着いた先は紗季さんのアパート。
「これで誰にも聞かれる心配はないよね?
私のいない間に何があったのか、洗いざらい話して貰いましょうか」
テーブルのこっちとあっちで向かい合わせの紗季さんと私。
紗季さんは良くサスペンスにあるような取り調べをする警察の人みたいに鋭い視線を飛ばしてきた。
「昨日は主任と二人で残業だったんです」
「知ってるわよ」
紗季さんに洗いざらい昨日の事を話した。