偽りの婚約者
私が断りの返事をした途端、下げていた顔が正面を向きその表情は冷たいものに変わっていた。
「……恩知らずのうえに冷たいな女だな。これを見たら考えが変わると思うけど?」
彼が携帯電話を開いて私に見せたのは写真だった。
「本当はこんな事、したくないんだけど仕方ないよな……」
……っ、何これ……。
「これ、もしかして貴方のマンションに泊まった時の……勝手にこんなものを撮るなんて酷い!」
そこには上半身だけ服を脱がされて下着姿で写っている私がいた。
「お前がいる経理課には知り合いの先輩がいる、その先輩に、この写真を送ってもいいなら断ればいい」
「……そんな事、しないですよね」
「お前の返事次第だから」
「どうして、こんな事……」
「どうする?俺の偽婚約者になるか、それともこの写真を……」
どうしよう……お見合い相手に脅迫されて偽婚約者なんて。
「……俺そんなに気が長い方じゃないし、この場で返事貰いてぇんだけど?」
……私のだした結論は……。
「わかりました。3ヶ月だけ貴方の婚約者になります」