偽りの婚約者
「……分かってくれたなら、それでいい」
「引き受けたんだから、今すぐにそれを削除してください……!」
「駄目だ。3ヶ月後、全てが終わるまでは消さない」
いつ両親達が戻って来たのか、いつお見合いが終わって東條家の人達が帰って行ったのか……気がつくと伯母と両親と出入り口付近にいた。
「あら、千夏じゃない」
突然、声をかけられた。
「紗季さん!」
「着物の着てるから最初、千夏だってわからなかったよ」
「今日、お見合いだったんです」
「あっ、もしかしてご両親?」
「同じ会社の先輩で中島紗季さん」
両親に紹介した。
「千夏さんと同じ経理課の中島紗季です」
「いつも千夏がお世話になって……」
「紗季さん今日はどうして、ここに?」
「これから友達の結婚パーティーなの」
「そうなんですか」
「時間がないからもう行くね」
紗季さんは私の両親に会釈をしたあと、会場の方に行ってしまった。