偽りの婚約者


「先輩は帰ったし今度はお前と話さないとな。
さっき先輩と話している時に聞いたんだけど、告白されたんだって?」



「私は、ちゃんと断りました」



「へぇ~、そうか……」





逃げるように一歩ずつ後退していく千夏を追いつめて行った。
千夏の体が壁に当たって動きが止まる。


「さっきは、誰かさんの勝手な思い違いで腕時計は飛んで来るし散々だったな」



「東條さん本当に、ごめんなさい」




「千夏がいるのに他の女と平気で、できる男だと思ったか」


「ちがうっ、そんな事……」



「いや、違わない。結局、千夏は俺より玲奈の友達を信じたんだ。
そんなに信用されてないんだったら別れるか?」


何……別れるってそう言ったの?
東條さんはもう私なんて要らないって事?

「私は別れたくない。本当にごめんなさい。
これからはもう疑わないからお願い東條さん」



「最後に抱かせろ」


「やっ、待って、こんなの」


信じてくれなかった事への怒りなのか先輩が近づくのを簡単に許したことへの怒りになのか……とにかく自分の中に渦巻いているどす黒い感情を抑える事が出来なかった。







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