偽りの婚約者


重い足取りで会社に向かった。



紗季さんと顔を会わせずらい。



「はぁ―……」





紗季さんは、もう来ていてパソコンに向かっていた。




声をかけずらくて、そっと隣に座った。


「主任から腕時計、返してもらったけど何故か壊れていたんだよね心当たりある?」



あの時私が――…



「紗季さんごめんなさい!
私が壊しました」



「とても気に入っていたのに」



「本当にごめんなさいっ。
でも……」



「何よ?」



「そんなに大事な物なら、あんな事に使わないで下さいっ」


つい大きな声を出してしまい周りの人達が私を見た。



みんなの視線を避けるように下を向いた。



「言うじゃない。今回の事で東條君にどれだけ想われてるか分かって自信でもついた?」



「そんなじゃないです。
私は東條さんの事を信じられなくて傷つけてしまいました。だから……」



「分かったから、もういいわ。
東條君には、はっきりと振られちゃったし」

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