偽りの婚約者
《俺達は結婚するんだろう?
結婚を考えているって事も話してあるから大丈夫だ》
それから数日が経ち……。
今日は東條さんのお父さんの病院に行く日。
家まで迎えに来てくれた東條さんの車に乗って、病院に向かった。
朝から緊張していたんだけど、病室の前に来たら余計に緊張が高まって……足がすくんでしまった。
先に入ろうとした東條さんが怪訝そうに振り返った。
「千夏……、入ろう」
東條さんは立ち止まってしまった私の所まで戻って来ると緊張しなくていいそう言って私の手を握って中に入った。
中に入ると、ベッドの近くに年配の女性が立っていた。
きっと、東條さんのお母さんだね。