偽りの婚約者
それから数日して、東條雅人から私の携帯電話に連絡がきた。
あのお見合いの日に、携帯電話の番号とアドレスはお互いに教え合っていた。
《東條だけど?》
《……何の用ですか?》
わざと素っ気なく返事した。
《なんだよ、冷たくねぇか?》
《冷たくしているつもりは、ないです》
《あのさ……》
《何ですか?》
《俺達、3ヶ月だけでも婚約しているんだし、その素っ気ない話し方どうにかならないか?》
……脅迫したくせに、あんな事をされて私が好意的に接するとでも思っていたの?
《……無理です》
《あっ、そう。まあいいけど》
《それで、何なんですか?》
《金曜日に会いたいんだ。安西さんの予定は?》