偽りの婚約者
まさか、こんな所で転ぶなんて恥ずかしいよー……。
「……大丈夫か?」
「……はい、大丈夫です……」
東條さんに助け起こしてもらってやっと立てた。
はぁ……やってしまった。
きっと呆れたよね。
「意外とドジなんだな」
せっかく海に来たのに何やってんだか。
はぁ……。
「おいっ、血が出てる!!」
あっ!!
自分の足を見るとスカートから出ている左側の膝下から血が出ていた。
痛みは感じなかったから、言われるまでまったく気付かなかった。
「歩けるか?」
「はい」
近くに座れる位のちょうど良い岩があり、座るように言われた。
東條さんは私の左足を良く見た後。
「擦りむいたんだな。ちょっと待ってろ」そう言って車の方に走って行った。
戻って来るよね……。
擦りむいた所が今になってジンジンと痛くなって来てしまった。
過ぎる時間が長く感じ、少しだけ不安になりながら待っていると東條さんが何かを持って戻って来た。
「東條さん!」
良かった戻って来てくれた。
「喫茶店でおしぼり貰って来た。足を出せ」
言われた通りに左足を出すと、彼はおしぼりで私の足をそっと拭き始めた。
「滲みるか?」
「ちょっとだけ……でも、もう大丈夫です」
傷口がきれいになった後、一緒に貰って来たと言い絆創膏を貼られた。