偽りの婚約者
話しがあると言っていた。
東條さんはいよいよ復讐に向けて動き出すのだろうか?もしかしたら知らないところで既に動いているのかもしれない……。
玄関の扉が開く音がした。
東條さんは部屋に入って来て私に気付くと「遅くなって悪かった」と言いスーツのネクタイを緩めながら向かい側に座った。
「腹へったな。
お前も、へったんじゃないのか?
今日は冷蔵庫の中は空っぽだし、まずは外で食って来ようか」
「あのっ、話しがあるんですよね?」
会社からここに来て気が付けば、もう8時近く。
お腹だって空いて鳴りそうになってる。
だけど彼の話しが気になってずっと落ち着かないでいた。
直ぐに聞きたいと思った。
「……話しは帰って来てからでいいだろう」
「で、でも……っ」
「着替えて来るから、ちょっと待ってろ」