偽りの婚約者
東條さんは私の話にはスルーながら外食に出た。
お互いに向かい合って注文したものを食べ始めたけど会話はなく……。
東條さんは黙ったまま何かを考えているようだった。
私は話しが気になっていて、お腹が空いている筈なのに食事に集中出来ずにいた。
「あの、東條さん?」
「なんだ?」
「やっぱりお話しが気になります。ここで聞いてはダメですか?」
「今は無理だ。ここで話すことじゃない」
ここで話しを聞く事は出来なかった。
「どうした?全然食べてないな、美味しくないか?」
「別に、そんな事ないですよ」
でも目の前の料理には、ほとんど手を付けてなかった。
「お前の口に合わないなら、他の店にすれば良かったか?」
東條さんはガッカリしたような顔になり、しまったと思った。
折角美味しいからと私をここへ連れて来てくれたのに……。
進まないながらも、目の前のお料理を口に運んだ。
凄く美味しい。
こんなに美味しいのに、無駄にするところだったよ。