偽りの婚約者
「……ただいま」
「おかえりー」
家に帰ると、母が奥の部屋から顔を出した。
「今日も東條さんと一緒にいたの?」
「うん、送ってもらった」
「ここまで来たのなら上がってもらえば良かったのに……。結婚に向けての話しは進んでいるの?」
母も父もきっと伯母も、私達が結婚に向けて進んでいると思っている。
「……まあね。」
本当のことを言えるわけもなく、適当に返事をして自分の部屋に入った。
東條さんが何を考えているのか分からない。
話しがあると呼ばれたのに聞けずじまいだったし……。
復讐の為の協力の具体的な話しもない。
東條さんと一緒にいると楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまう。
東條さんは意地悪な時もあるけど時々、優しいし時もあって……。
そんな東條さんの近くにいると何故か安心できる。