偽りの婚約者
知らなかった事実
紗季さんとはいつか話した時以来、東條さんとのことは話題にする事はなかった。
でも……今日、紗季さんは私に東條さんとの事を訊いてきた。
「……千夏は東條君とどうなってるの?」
「え?えっと……」
そんな質問に、どう答えたらいいのか私は分からなくて……
返事に困っていると、紗季さんは言葉を続けた。
「二人は、つき合っているの?」
紗季さんは思いつめた顔で聞いてきた。
形だけの偽婚約者だけど……
「はい、つき合ってます」と応えた。
「……この前、言ったはずよね?やめた方がいいって」
目の前には、いつもと違う強い口調で話す紗季さんがいて。
凄く怖い顔をしていた。
「紗季さん?どうして、そんな怖い顔で……」