偽りの婚約者
そして歩いていくと、紗季さんの住んでいるアパートに着いた。
「入って」
「お邪魔します」
私は紗季さんに続き、部屋の中に入って行った。
「冷たいお茶でいいよね?今、用意するから適当に座ってて」
「はい。……やっぱり一人暮らしっていいですね」
「そう?」
「私は親と一緒だから楽だけど時々、家族がいると煩わしいって思う事もあるんです……」
私は紗季さんの話しを聞くのを少しでも先に延ばしたくて……
東條さんとは関係のない事ばかり話していた。
話し疲れて一息ついたとき紗季さんが口を開いた。
「千夏が聞きたくないっていうのは、すごく伝わってきたんだけど、これは大事な事だから。
千夏には、どうしても聞いてほしいの」