偽りの婚約者
「それに……東條君と玲奈はこの間、二人で逢ったみたいなのよ。
それなのにあなたは東條君と付き合っているっていうし……このままだと千夏が泣く事になるんじゃないかって心配で……。私は、玲奈も千夏にも傷ついてほしくないのよ」
玲奈さんと東條さんが二人で逢っていたんだ……。
「もし玲奈とヨリを戻したら、千夏はどうするつもり?
二人は嫌いになって別れた訳じゃないんだよ。
千夏ではなく玲奈に戻る確率は高いと思う。
私はね、千夏の事が心配なの……」
紗季さんの話しはショックだった。
復讐が終わったら私は用済みで……彼は玲奈さんの元に戻る。
そうなったら、私はどうしたらいいんだろう?
「千夏、東條君から離れた方がいいわ、今ならまだ_____」
『離れる』
そう考えただけで胸が痛くて、辛い。
紗季さんはまだ間に合うっていったけど……。
もう遅いんです。
だって私は……。
「……私は東條さんが好きなんです。
だから、一緒にいたいんです」
東條さんが私を必要とする間は一緒に―――――。
「千夏っ、あなた何を言ってるの!
私の話しを聞いていたでしょ?」
心配してくれる紗季さんには悪いと思うけど、今はまだ……東條さんから離れたくない。
「……ごめんなさい。紗季さん」