偽りの婚約者
二度目の夜
疑問は深まるばかり。
それでも、私は考える事を止めなかった。
東條さんの事そして玲奈さんの事をひたすら考えてしまった。
紗季さんが言っていた玲奈さんのお兄さんの秘書、なんて名前の人だったっけ?
名前はどうでもいいか……とにかくその秘書との婚約式が決まっているのに東條さんは玲奈さんを取り戻そうとしているのかもしれない……。
その婚約式に乗り込んで玲奈さんを奪うとか……。
やっぱり東條さんの考えている事なんて分からない。
いくら考えても分からないなら、いっそのこと東條さん本人に聞くしかない。
「もう一杯ください」
「安西さん大丈夫ですか?飲みすぎないほうが」
「大丈夫です!もう一杯お願いします」
いつもなら一杯だけにしておくのにモヤモヤした気分をどうにかしたくて三杯も飲んでしまった。
カクテルのおかげで気が大きくなっていて、勢いのまま電話をしてしまおうかと思ったとこで。
携帯電話の電源を切ったままだったことに気づきバッグから出した。
電源を入れた途端にすごい数の着信とメールが入っていた。