偽りの婚約者
まずはメールを確認。
紗季さんのメールが一件、後は東條さんからだった。
電話をしても連絡がつかないことを心配している内容だった。
こうなったら全て話してもらおうじゃないのと意気ごのんで、東條さんに連絡しようとした。
その時、突然着信音が鳴り携帯を落としそうになった。
ドキンッと心臓が跳ねた。東條さんからだ。
びっ、びっくりした……。
驚いたせいか酔いが醒めて頭の中のぼんやりしていた部分がはっきりとしてきた。
電話もメールも放って置いたから怒ってるんだろうな。
うーん、出たくないよ。
でも、これ以上は無視するのも良くないし恐る恐る出てみた。
《……は……い?》
あれぇ……頭がくらくらする~。
酔いは醒めたわけではなかった。
《何度も連絡したんだけど》
東條さん怒ってる。
かなり不機嫌な声が携帯を通して聞こえてきた。
《ごめんな……さ……。気がつかなかったん……れす……》
あれれっ?変な喋り方になってしまった。
呂律が回らない……。
電源を切ってたのは本当の事だし嘘ではない。
でも東條さんに対して、後ろめたく思ってしまう。
《残業ではなかったみたいだしな》
《ど、どうしてぇ、知ってるんれすかぁー?》