偽りの婚約者
壁に追いつめられ固まったままの私に。
東條さんは目を細めて顔をぐっと近づけてきた。
ちっ、近いよ……。
「あっ、と、とう……じょうさん?」
切れ長の目がじっと私を見つめてる。
凄く恥ずかしいのに、そらせない。
さっきから私の心臓はドクンッ、ドクンッと大きな音を立てて鳴りっぱなしだ。
「男と一緒でも構わないだって?勝手な事ばっか言ってんじゃねぇよ」
勝手なのは東條さんだ。
私はたんなる協力者でしょ?
復讐が終わったら私の事なんて、どうでも良くなるくせに――――。
「俺には心配する権利はないような事を言ってたな?」
彼は、乱暴に私を引き寄せた。
「だったらっ―――――――」
えっ!?えーっ?ちょっと待ってっ!!
慌てて出した両腕は、なんなく避けられ更に近づいて来た東條さんに荒々しく唇を塞がれた。