偽りの婚約者
「……信じられません」
「……そうか……だったら信じないまま抱かれてろ」
「ひどいっ、サイテー!!」
彼を最低だと思うのに体に触れる手は凄く優しくて―――――。
触れられた所が熱を帯びて熱くなっていく。
東條さんは初めての事で半泣き状態になっている私をそっと抱きしめた。
抱きしめられて彼の体温を感じているうちに、気持ちがだいぶ落ち着いて来て今度は眠くなってしまった。
眠りに落ちそうな私の耳にある言葉が囁かれた。
それは本当なの?
本当に私の事を……?
信じていいの?
だったら私にも伝えたい事が……。
目を開けてられなくて、もう少しで意識がなくなりそうになっていたけど言ってくれた言葉が東條さんの本当の想いなら私も正直な気持ちを伝えたいと思った。
復讐を成し遂げようとする冷酷な顔の裏に優しい所もちゃんとあって……好きにならないようにって抑えようと思ったのにダメだった。
「東條さん……が……好きです……」
私の言葉は届いただろうか?
確かめたいけど……もう無理みたい。
私は、そのまま眠りの世界に入って行った。