偽りの婚約者
悲しくなって涙が、ぶわぁっと溢れて来た。
「千……夏?」
「あの言葉は嘘だったんですね?」
「何の事だ?」
「気持ちなんてないのに抱くためにあんな事を言ったんですね。
復讐が終わったら……あなたは玲奈さんとヨリを戻すんでしょ?」
「玲奈の事を誰から聞いたんだ?」
「東條さんの気持ちは良く分かったから、もう……いいです。……シャワーして来ます」
そのままの格好で出て行くわけにはいかず散らばっている自分の服を引き寄せ下着と上半身だけ身につけベッドから降りようとしたが。
呆気なく捕まりベッドの上に逆戻りした。
「うっ……くっ……」
ただ悲しくて東條さんの腕の中で泣いた。
「どうしてほしい?」
彼は、なかなか泣き止まない私をあやすように抱きしめながら訊いてきた。