偽りの婚約者
あの頃は、玲奈との未来がずっと続くと信じて……俺はそれを全然疑わなかった。
「玲奈、こっち来いよ」
そう呼ぶと玲奈は素直に俺の所に来て、いつものように甘えて来る。
そんな玲奈が愛しくてキスをした。
「雅人……、好きだよ」
その言葉に素直にうなずく。
俺も、玲奈が好きだ。
「……玲奈、結婚しようか?」
「っ……うんっ!」
玲奈は、少し瞳を潤ませながら嬉しそうに微笑んだ。
玲奈との結婚話しを進めたくて、自分の両親に玲奈を引き合わせてから1週間が経った。
「玲奈、お前の家族にも会っておきたいんだけど?」
「……うん。家族に話しをして見るから、少し待ってほしいの……。」
玲奈は、自分の家族に俺を会わせる事を、何故か渋っていた。
玲奈の家族に会わせてもらえない訳でもあるのかと、心配になって訊いてみたが。
「……俺が玲奈の家族に会うのは、駄目なのか?」
「そういう訳じゃないけど……今度、都合を聞いておくね」
特に気になる返事ではなかった。
なんだ、俺の思い過ごしだったか。
それから、3週間経ってやっと玲奈から家族に合わせるという話しがあり、今日玲奈の家に行く事になった。