偽りの婚約者
それから、玲奈の家族に会う日。
玲奈の家まで来て、想像以上の豪邸に驚き圧倒された。
もちろん、玲奈があの滝本興産の娘だって事は知っていた。
けれど門の前に立った時は、冷や汗が背中をつーっと流れた。
「……あのね雅人、もし私の家族に何か言われても気にしないで?」
玲奈が家族になかなか会わせなかったのは、俺の事を良く思ってないからか……。
「……お前の家族は俺の事、良く思ってないんだな?」
「あの人達は、普通の感覚じゃないから。
自分の、ものさしでしか周りを見ようとしない。私はあの人達のそんなところが嫌なの……。」
うすうすは感じていたんだ。
玲奈と俺……家柄ってのが違い過ぎるって。
それでも、家柄のせいで玲奈を失いたくはなかった。
玲奈とは3年付き合ってきて、俺の中ではもう大切な存在になっている。
「あの人達は……私達を引き離そうとするかもしれない。でも私は、雅人に付いていくって決めたからね」
玲奈は俺に付いてきてくれると言ってくれた。
今の俺にとって、その言葉がどれだけ心強いか……。