偽りの婚約者



「ほら、千夏も飲みなよ!」



「玲奈さん。私はあまり飲めないんで……烏龍茶でいいです」



「もう、社会人ならビールの十杯や二十杯軽く飲めるようになりなさいっ。」



玲奈さんの言ってることは、かなり無茶苦茶なんですけど……。
近くにいる紗季さんに訊いてみた。



「紗季さん……、玲奈さんに何かあったんですか?」



「……実はね、さっき元彼に会っちゃったみたいでね。ちょっと荒れてるの」



「そうなんですか」


元彼ってこの間、言ってた東條って人の事かな……。


「仕方ないわよね。全員参加のパーティーだもの……本社と子会社の人達合わせたら、かなりの人数だったらしくて、隣にもう一つ借りたんだって」


子会社の人達も一緒だとやっぱり大人数になるよね。



「それで子会社の人達の一部がこっちの方にも来ていて東條君は偶数にも、こっちの方に席が用意されていたの」



「あいつ、今度お見合いするんだって……だから、やり直そうって、言えなかったの………」



「よしよし、パーティー終わったら家においで!今日は二人で飲もう?」


「うん……」

玲奈さんには複雑な事情があるのかもしれない……。
かなり落ち込んでいるようだけど元気を出して貰いたいな。
どうしたら……。


「……私も、一杯ぐらい付き合います!」



玲奈さんと紗季さんのコップにビールを注いで自分のコップにも入れた。



「えっ、ちょっと千夏、大丈夫?」


紗季さんは慌てて、聞いてきた。




「大丈夫です。あの時みたいにはならないように気をつけます」







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