HELP
 「せっかくですから名前伺ってもいいですか?」
 胡桃の顔を覗き込むように、花丸は訊いた。その動作が新種のは爬虫類に見えてならない。
「胡桃です」
「固そうな名前ですね。でも、そういう女性ほど気を許した相手には甘えたがる」
 花丸は口角を上げた。
 胡桃は何も言えなかった。まさにその通りだったからだ。
〝たいへんよくできました〟
 と心の中で彼女は思った。
「間もなく北千住、北千住」
 車内アナウンスが響く。
「いい旅になりそうだ」
 花丸の言葉を左耳で受け、胡桃は四度目となる「はあ」と溜め息をついた。
< 11 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop