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 「これ」と絹枝がハンカチに描かれている絵に気づく。
「気づいたのね」
「ヤマザクラよね」
 そこかよ、と梨花は舌打ちをした。
 いけない子。
 女の子が舌打ちなんかするもんじゃないよ、ってマモルに優しく諭されたっけ。
「それは見ればわかるでしょ」と水鉄砲を構える。
 ヒヒッッと競走馬のような声を絹枝は出し、ハンカチに目を落とした。
「わからないの?」と梨花。
「さっぱり」と絹枝。
「本当、母親って息子のことを知っているようで何も知らない」
 梨花は不適な笑みを滲ませた。絹枝は席に備え付けられている小型のテーブルを広げ、そこにハンカチを置いた。
「どう?」
 と梨花は絹枝を急かした。
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