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 あらゆる思考が梨花を席巻する中、園長が口を開いた。
「これはどういうことですか」
「すみません」
 そう言っておけば、大概の事は処理される。
 が、「すみません。ではすまされません。もう一度訊きます。どういうことですか?」園長は引かなかった。全身全霊でこの場に臨んでいる。その証拠にドレスの裾を持っている。それは競走馬の手綱のようでもあった。鞭があり、お尻を叩けば園長は走り出すかもしれない。
「セックスの話しで揉めたんです」
 この先生は頭がよろしくない、と梨花は思った。単刀直入すぎる。
「セックス?」
 遥か昔のような、さらには太古から受け継がれる呪術のような、または中世の黒魔術で用いられるマントラのような、不思議な文言を聞いたような表情を園長は見せた。
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