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 「先生がいけないんです」
 マナが涙目でいった。この女も策士であり演技者だ。自分の身を護る術を知っている。お互い、大人になったら怖い存在になり、絶対に遭遇したくない相手と梨花は位置づける。同じ匂いのする同性は、同調するようでいて、そりが合わない。梨花はそう思っているし、家にある『男と女のトリセツ』という本にもしっかりと記載されていたのを思い出す。
 それから園長はマナから事情を仔細に聞いていた。時折、梨花の方をチラ見し、先生を睨みつけ、その場は暮れということもあり、解散になった。だが、ここで問題が、今日の罰であろうか。今となってはわからない。母親は梨花のことを迎えに来ることはなかった。そして、その日を境に母親は消えた。梨花は孤児になった。 
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