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 それでも翌日は、幼稚園に一人でいった。なんとなく行くべきだと判断した。園長先生に事情を説明し、彼女は驚いていた。固定電話を取り出し、受話器を耳にあて、乱雑にボタンをタッチし、色々な場所に電話をかけた。二回に一回に割合で、『その電話番号は現在使われておりません』という義務的なアナウンスが梨花に耳に届いた。園長の指は震えていた。突然襲ってきた園児の不幸。その不幸を信じられない気持ちが園長の指先に反映されていた。梨花よりも、より深く。梨花は至って平静だ。母親がいてもいなくても、セックスの現場を見るか、見ないか、の差に過ぎない。むしろ生々しい描写がなくなり、すっきりしているぐらいだ。
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