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 園長が何百回と電話のプッシュボタンをタッチしているときだった。無機質な園長室の扉が二度、ではなく三度ノックされた。二度、と認識し三度と認識した微かなズレには理由がある。それは単純だ。二と三の間に微妙な間があいたのだ。
「どうぞ」
 と少し慌てた声音を園長は放つ。真っ赤な唇は唾を吐き出す過程で色が落ちていた。
 扉がギッと軋む。
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