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 「なにか?」 
 と意志の強い相手のお腹に響くような声がした。
「なにも」
 と憧れをオリジナルにするには真似から入るべきだと、梨花は心得ている。
 梨花の対応に、「ふつ」と鼻で笑われた。黒髪の女性の隣には、貫禄充分であり、お金、の匂いをする男が座って、文庫本を呼んでいる。右手で本を固定し、左手は黒髪の女性の太腿に添えている。その自然な行為に梨花は目を見張り、こんな男もいるんだ、と妙に感心する。 
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