HELP
 「鳩葉ちゃんには敵わない」と青葉のいつもの癖である前髪を指先で捻る癖をしようとするが、「そうだった、髪を切ったんだった」と、くしゃっとした笑みを見せた。
 鳩葉は彼のあどけない笑みが好きだ。彼が肩まであった髪をばっさり切り出しのが、二週間前、互いに二十五歳という歳半ばになってまで夢を捨てきれず音楽で食べていこうと思っている。が、そこまでうまくはいかない。ライブハウスに営業をかけ、運良く出演させてくれるところもあれば、そうでない場合もある。圧倒的に後者が多い。それでも、二人を懇意にしてくれるライブハウスがあり週に一回定期的な収入をもたらし、音を放つことができる。なので、りょうもう号に乗り、赤城へ向かう。しかし、交通費は実費だ。比較的時間に融通の利くアルバイトだが月の収入は微々たるものだ。夢を追うというのは、お金との闘いでもある、鳩葉は常々にそれを感じる。
< 14 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop