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 「君の顔色は不安の色だ。高校生、というのは性への衝動に目覚めやすい。身体的変化は著しいし、男もそういう目線で見て来る。たしか梨花ちゃんで間違いないよね?が下腹部を気にしていることは先ほどからわかっていた。だが、問題ない」
 男は言った。
「問題ない?」 
 梨花は自然発生的にお腹をさすった。
「君は妊娠はしてない」
「でも」
 梨花は結果を知っているだけに異議を唱えようとした。
 が、「君のお母さんも同じように、思い込む人だった」と男は言った。
「思い込む?」
 梨花は男を見据えた。
「人は思い込む、とそれがあたかも現実に起こったことのように錯覚してしまう。状況を悪い方、悪い方、に考えてしまうから、実際に起こったこととは別の現実を見いだしてしまう」
「じゃあ、妊娠は思い込みだと?」
 梨花は首を傾げた。
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