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四号車

 大人が嫌いというよりは、大人の女性が嫌いなだけだと、梨花は水鉄砲をマモルの母親に突きつけながら思った。いずれは自分が大人になるにしろ、何かしらの清算をしなければならない。それは彼女の家庭環境がそうさせるのか、むしろ中学生から高校一年という難しい歳頃がそうさせるのか、梨花にはまだわからない。
「ちょ、ちょっと、梨花ちゃん、どうしたのよ?」
 マモルの母親である絹枝が絹のように細くも弾力やる力強い声で抵抗を示した。その度にぐいっと右肩に水鉄砲を梨花は押し付けた。
「ねえ、おばさん。マモルはあなたのペットじゃないんだよ」
 梨花は平坦な口調で言った。
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