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 ようするに、化粧を剥ぎ落とされるのが嫌いなのだろう。見栄と虚栄、両者が折り混ぜになった絹枝の顔はどうしても鬼軍曹を彷彿とさせてしまう。マモルには悪いが。しかし、世間一般的なマモルの母親は年齢の割には、美人、で通っている。「奥さんはいつも綺麗ですね」「指と指輪からハーモニーが感じられます」と幾分か誇張させれた賛辞が彼女に降り注ぐ。人は褒められ、煽てられると弱い。それが女性という生き物なら尚更だ。常に褒め合って生き、心の中では『私のが上よ』それが女性の心理状態だ。高校一年としての生活は既に三学期に入り、二年にさしかかろうとしている。女性徒は数グループに別れ、戦国時代さながらにグループ内の構図も変わる。時代は変われど、本質は変わらない。ある歴史の教師が、
「大事な人を守りたいと思った時に人は強くなるんだ」と言い切り、「逆もしかり、それでも人は自分の損得で簡単に人を裏切る。これはいつの時代も変わらない。だが、君らはそんな人間になるな」 
 とチョークを持った教壇をドンと鬱憤を晴らすかのように叩き、涙まで流した。噂によると歴史教師は結婚を決意した女性がいて長年の交際をしていたらしいが、他の男性に付き合っていた彼女を取られてしまったらしい。なので、本来の生徒を導くという職務とは逸脱した熱弁をあの日に彼はしたのだろう、と梨花は冷静な分析をした。
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