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 じゃあ、マモルの意志を尊重するのね?」
「それはわからないわ」
 すかさず梨花は絹枝に水鉄砲を押し付け、「わ、わかったわよ」と降参させる。
 乗客がざわついている。
 梨花は立ち上がった。乗客の一人である初老の男が彼女に声を掛けた。
「何してるのかな?」
 返答に困った梨花は、「公演の準備です。緊張して車内でリハーサルを」と咄嗟に嘘をついた。
「ほお」と感心したように初老の男は口をすぼめ、「思う存分にやるがいいさ。練習の成果が本番に生きるんじゃ」とアドバイスした。言っていることはごもっともだが、まずは立ち去って欲しい、と梨花は口に出さず目力で訴えた。
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