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 「頑張るんじゃぞ」
 と初老の男に彼女は肩を叩かれた。その甲斐あってか車内の雑然とした雰囲気は一つにまとまった。
〝なんだ演技の練習か〟、と。
 その点は、初老の男に感謝しなければならない。劇団員でも何でもないのだが、初老の男に向かって梨花は深々とお辞儀をした。お辞儀をしたときに制服のスカートからパンツが見えてはいけないと思い裾を軽く押さえながら。
 雑然も一段落したところで梨花は席に座ろうと思った。だが、そこには鳥の嘴が何本もあるかのようにトップを立たせた髪型の男が座っていた。こういう不届き者には制裁が必要だ。
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