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 胡桃は男を仔細に眺めた。どこが二面性を感じさせる雰囲気を醸し出している。サボテンの刺のようにトップを立たせた短髪。スキンケアの行き届いた艶やかな肌。瞳には強い意志が感じられ、唇はきりっと引き締まっている。口元が緩めば、規則正しい歯並びを垣間みることができる。それに同化させたかのよにくしゃっとしたホワイトシャツに、意図的にダメージを施したジーンズが似合っている。
 頼りない印象がなければ、胡桃にとって彼は、ザ・タイプ。
 でも、男には頼りたい。だって、自分が頼りないから。
「座席番号はどうなってます?」
 男を仔細に眺めすぎ、気まずい間があいていたので、そんな質問。
「A2です」
 男は歯切れよく断言した。
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