HELP
 「それなら、私の隣ですよ」
「だと思ったんです」
「はっ?」と私。
「美人を引き寄せる性質が僕にはあるんですよ。これも何かの縁です。旅は道連れ世は情け」
 男は機敏な動作で胡桃の横に座った。そして見つめてくる。男の態度の変化に彼女は驚きを隠せない。思わず特急券を見返す。
 A1
 やはりここは自分の席だ。
「僕の名前は、花丸銀二っていいます」
 花丸が握手を求めてきた。
「学校で先生が赤ペンで描く、はなまる?」
 胡桃は苦笑しながら言い、彼の握手に応じた。温かい手だった。
「なので学生時代は困りました」
 花丸は左手で頭を掻いた。
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